働きたくないイタチと言葉がわかるロボット 人工知能から考える「人と言葉」

読んだきっかけ

囲碁のトッププロにAIが勝ったことで、人工知能について知るべく、働きたくないイタチと言葉がわかるロボット 人工知能から考える「人と言葉」を読みました。

期待した内容と実際

囲碁を打つよりも難しいこと

チェスの世界チャンピオンがディープブルーに負け、将棋の名人がPonanzaに負け、囲碁のプロがAlphaGoに負けました。囲碁は、ゲーム中で可能な組み合わせが非常に多く、10の360乗もあるそうです。(有利不利や定石を全く無視して、ルール違反でない着手をした場合)

10の360乗といったら凄い数なのですが、そして囲碁のプロ棋士やコンピュータプログラムも凄いのですが、それよりも難しいことがあります。それが言葉です。

そもそも言葉が分かるとは

この点が囲碁や将棋と最も異なる点だと思われます。囲碁や将棋はルールは明快です。また、目的も明快(囲碁なら相手より多く陣地を確保する、将棋なら相手の王様を取る)です。決まったルールの中で良いものを探す、をひたすら行えばよいわけです。

一方で、言葉は、ルールが全く無いわけではないですが、明快に記述できるルールではないようです。また囲碁や将棋とは異なり、目的も明快ではありません。実際、第2章では「おしゃべりができること」について、議論がなされています。チューリングテストの話も、考えさせられます。機械が言葉を理解しているかどうかを人間とどれだけ近い行動ができるか、から判定する、というアイデアが凄いですね。

人の真似をする機械(コンピュータ)か、それとも機械独自の方法か

人が言葉をしゃべることは、言語学や心理学、脳科学などの観点から非常に興味深い内容です。一方で、言葉を操る機械を作るときはどうでしょうか。「人のやり方を理解し、同じように動く機械を作る」という方法も考えられますが、別のアプローチも考えられます。「大量のデータを与えて学習させる」といった、機械らしい方法も考えられます。

「鳥のように空を飛びたい」と思ったときに、「鳥のように羽を羽ばたかせる」(鳥を真似る)のか、「プロペラやジェットエンジンで推進力を獲得する」(別の方法を考える)のか、といった感じです。

この点については本書の範囲は超えますが、そういった議論への橋渡しとして価値の有る本だと思います。

予想外の収穫

SNSでのトラブルについて、興味深いトピックがありました。


農民のイタチ☆きゅうり増産中
「こういうやつ、本当に迷惑だよな~。↓」

イタリア大好きイタチ
「昨日、電車に乗るときにきちんと並ばないイタチがいたので注意した。そしたら、別のイタチから『年長者に対してその言い方は何だ!』と怒鳴られた。それで喧嘩になって電車の出発が遅れた。」

このSNSの例は、「指示語が指す対象が誰か?」という問題(あいまい性)を取り上げた題材です。
農民のイタチが迷惑と思っているのは誰なのか?イタリア大好きイタチに同調している(並ばないイタチを批判している)のか、それともイタリア大好きイタチを批判しているのか?

他にもあいまい性を取り上げた題材がありましたが、この題材が印象的でした。説明するときに、例をあげて説明することは良くありますが、どのような例を持ってくるか、というのが大事なのだな、と改めて感じました。

読んだ後の行動

例を重要なものとしていきたいです。マイ見積では、見積例を作成していますが、概念を説明するよりも、実際に体験できるような例を作るようにしていきます。

書評記事著者: 水野史土

  • ビジネスを加速するウェブサービス「マイ見積」運営
  • BMI22エンジニア

主な著書

  • WordPressユーザーのためのPHP入門 はじめから、ていねいに。[第2版]
  • 徹底攻略 PHP5技術者認定[上級]試験問題集
本の種類
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